夢を見た。




それは紛れもない僕自身だった。

久々に頭を掠めた短編的な何かです。
フィクションです、しかしながらどう受け取るかは読み手の自由なんでしょう。
否定する事も肯定する事も、それは人それぞれが持つ価値観の問題であって、作品は必ず良し悪しを自分達の価値観で決めるものです。
万人に受ける様な作品を創作する事が出来るなら、それはカリスマ性だと言わざるを得ないでしょうが、私はどんな作品にだってその人自身の思いが篭められているものだと思います。

だからと言って、自分の作品を認めてくれだなんて思っていない、共感が欲しい訳でもない。

それは私にとって自己表現の、ほんの一層に過ぎないのです。
私には、絵を描く事と詩を書く事と…こうした作品を通してしか、自分を表現する事が出来ないんでしょうね。
理解して欲しいんじゃないですけれど、それは理解されなくて良い訳でもないのですね、たくさん考える事が生きていく上で必要な事でも、時に立ち止まって迷ってしまう事もある事も。
正論を吐く事だけでこの世の中を渡って行けるなら、とても生き易い世界だったでしょうに。

昔からわかっていた事です、それでもこの世界を嫌いになれないのだから。

…綺麗に纏めてしまえばそうなんでしょう。
私が私である為に何が必要なのか、自分勝手な私には何も見えないかも知れないのですけど。
それでも逃げる為に生まれて来た訳じゃないのですから。



珍しいくらいに短編を書き上げる前書きの話が長くなってしまったのは、ずっと色々とあったからですね。
多分、今もきっと元通りが来た訳ではないし、気分の浮き下がりの激しさに親友を巻き込んだりしてしまう、とても愚かな自分が居る、それでも自分と付き合って自分自身をコントロールしていかなくてはいけないのもまた事実ならば、ぐだぐだした事を語るよりも先に進まなくては。

抽象的に呟く事が出来るならば、その声はいつだって届いているのです。







その場所はとても暗くて冷たくて、強いて言えば真っ暗な闇だった。
そんな中で、ふわふわした金色の髪を持った少女が肩を震わせて蹲っていた。

僕は少女に問い掛けた。

「どうしたの?」

少女は僕に答えた。

「かなしいの」

僕は少女に訊ねた。

「何がかなしいの?」

少女は言った。

「かなしいよ、かなしい」

少女はそのまま咽び泣く様に僕の質問に答えなくなった。
世界は深い闇に包まれていて、僕は眉根を下げ、そして少女を見返した。

どうして、君はこんな世界に居るの?
この闇がいけない。
とても寒くて暗いこんな場所に居たら、君はかなしいままだ。

僕は漠然的にそう感じて、蹲る様に、顔を手で覆い隠して泣き続けているらしい少女の手を取った。
少女の顔はわからなかった。
ただ、驚いた様に息を吐いて僕の顔をじっと見つめた事は真っ暗な闇の中でも感じる事が出来た。

「走って」

僕は呟いた。
少女は頷きはしなかった。
寒さが増した。
僕は走り出した、少女の手を右手にしっかりと握り込んで、そんな寒くて暗い闇から逃れるみたいに。
強く強く走り出した。

「どこへいくの?」
「此処じゃない、何処か」
「ここじゃない、どこか」
「そう、この闇はいけない。君の心をかなしませる」

だから、此処じゃない、何処か。
闇じゃない、世界へ。
僕は走り続ける。
少女は何も言わない。
暗い闇の中から、何処か、明るい場所へ。
光のある世界へ。

けれど、ふと思う。
僕が導く先は、本当に光だろうか、と。
僕はどうして此処じゃない、何処かへ、少女を導こうとしているのか。
闇が深い、真っ暗な場所。
光は一切届かない。

「どうして、闇はだめなの」

僕は足を止めた。
目を見開いて、そっと後ろに振り返った。
少女は真っ直ぐで、真摯な瞳の中に感情を深く落として、碧く潤んだ瞳に僕を映し出していた。
僕は一瞬答えに詰まって目を逸らしてから、少女に向き直った。

「…だって、かなしいんだろう」
「かなしかったらどうして、闇じゃだめなの」
「だって、それは」

考えが後ろ向きになるから。

「どうして?」

少女は可愛らしく首を傾げて見せた。
僕は返答に詰まって、何も答える事が出来ない。

「闇はいいのよ」

とても落ち着ける。
だったら、何故君はかなしんでいたの。
僕の唇がそっと動きを見せて、声と言う音を発するまでに少女は深く笑みを宿した。

「だって、かなしいって言うんだもの、あなたが」

その笑みは深く深くて、そして、それでいて。
少女には相応しくない酷く恐ろしい笑みだった。
僕は思わず身を退いた。
けれど、それは叶わなかった。
僕の右手は少女の手を掴んだままだ。

「どう言う、意味、だよ」

僕が問い掛ける。
少女は小首を傾げたまま、にっこりと微笑んだ。

「言ったままのいみ、わかるでしょう」
「わからない、よ」

そんなのわからない。
闇が一層深くなった気がした。
声以外の音が何も聞こえないこの世界で、どうした訳か耳鳴りの様な音が響く気がする。

「なのに、どうして光をめざすの」

おかしいおかしい、と小さく笑みを零す少女。
僕は何も答える事が出来ない。
いや、声が出なかった。
少女の姿は少しずつ変わっていく。
金色だったはずの髪は僕と同じ闇色に、その碧の瞳が黒く染まっていく。
その様にただ驚きを浮かべるだけだった。

ああ、それは僕だった。
確かに僕と全く同じ。
鏡越しに映る、虚像の如く。
ただ違うのは対称的では無い事か、それは正しくもう一人の僕だった。

「どうして、」
「どうして?へんなこと聞くね」

おかしい、と少女だったものは呟く。
笑みが一層深くなって、戦慄を覚えた。

君がもし僕だと言うならどうしてかなしいなんて言ったんだ。

僕はじっと少女だったものを見つめる。
僕と同じ僕にそっくりなそれは、不意に笑みを潜めた。

「あなたがそれを聞くの?」

それ以上の言葉は発せられる事は無かった。
それは態となのか、答える気が無いのか、どちらにしろ僕にはわからない。

「闇はいいのよ、とても居心地がよい」

どうして?暗い気持ちが晴れる事など無いのに。

「だれもいない、そんなせかい」

冷やりとした。
まるで首筋に刃物を突き付けられた様な、妙な感覚が僕を包む。
恐ろしいと思った。
それは、僕なのに。
僕なのに僕は、僕自身が恐いと思った。
少女だったものには、僕の心が手に取る様にわかるらしい。
再びその顔に笑みを零す。


「闇はいいわ、そしてそれはあなたが望むせかい」

だって、わたしはあなた自身だもの。


くすくすと声が聞こえてきそうなくらいに、うっとりとした声音で紡がれたそれは。
僕の耳に、鼓膜を震わせて音となって脳に届いた。

呆然と見返す僕とゆったりと微笑む僕。

けれど、ふと思った。
おかしいじゃないか、そう思った。
だってこの世界は闇なのだ。
真っ暗な光の無い光が全く届かない真っ黒な世界。
なのに、どうして僕は少女の髪が金色だと、彼女の瞳が碧だと認識出来たのだろう。
どうしてあの時、少女の手を取って光を目指したのだろう。

この世界が僕の望む世界だと言うなら、何故。
かなしい、と言って泣いた君が、闇がいい、と言った君が僕自身と言うならどうして。

「…ああ、そうなんだ」
「なぁに」
「君は僕なんかじゃない」
「どうして?」
「だって、僕は僕でしかないんだ」

誰も代わりが出来る訳じゃない。

「あなたのこころの半分だと言っても?」
「………」

僕は黙り込んだ。
返答に詰まった訳では無かった。
わかったのだ。
わからなかった事がまるでぴたりと当て嵌まるピースの様に、ふとわかったのだ。

「もし、君が僕の半分で、」
「うん」
「君が望むこの世界を、僕が望んでいたとしても」
「うん」
「君を、かなしむ君をこの世界とは違う場所へ連れて行こうとした…」

そんな僕自身だって本当の『僕』であった。
『僕』の心自身だった。

「僕は、闇に呑まれたい訳じゃないんだ」

生きたいんだ。

「僕は、光を目指したいんだ」

行きたいんだ。

「君も一緒に、此処から違う場所へ」

いきたいんだ。

少女だったもの、僕自身だったもの。
目の前の僕はじっと僕を見返していた。
その顔に笑みは無く、ただ無表情に真っ黒な瞳を僕に向けていた。

目の前の僕は、確かに僕だろう。
真っ暗な闇の中でもどうして姿を認識出来たのか。
どうして呟いていない思った言葉を理解出来たのか。
僕じゃない、と言った僕に、否定をされて酷く傷付いたみたいな顔をした僕は。
紛れもない僕自身だった。

僕は、僕自身、この世界の中での光でもあった。
だから認識出来た。
目の前の僕の事だって、認識出来たんだ。

少女だったものは残念そうに目を背けて、それから先程とは少しばかり違う笑みを湛えた。
それは、少しばかり少女の面影を潜めた可愛らしい笑みだった。

「ざんねん、せっかく闇にひきこもうと思ったのに」

その顔は全然残念そうじゃなかった。

「でもいいわ…わたしをあなただと認めてくれた」

満足そうで、何処か嬉しそうな、そんな笑みだった。

闇を望んだのも僕自身で、光を目指したのも僕自身だった。
紛れも無く、僕はそこにいた。
そしてどちらも望んで迷っていた。
どちらも大事な僕自身だった。

「かなしいの」

そう言ったのは、暗い闇を望む僕を、僕が否定していたから。
それはどちらも僕だった。
僕だったのに。
僕じゃない、と言った僕の表情は酷く。
とても、酷く傷付いていたから。

君を受け入れたら、僕はきっとまた闇に呑まれるんだろう。

それでも君は僕だから。
光を目指す僕と、闇を好む僕。
そのどちらも僕自身だから、僕は君を認めて一緒に行くと誓うんだ。
だから、今度闇に落ちても君を一人にはさせないんだ。
僕が居るから、君は一人じゃない。
今度は一緒に闇を抜け出して光を目指そう。
きっと君は直ぐに闇に行きたがる、だから手をしっかりと握って。

離さなかった君のその手を握って。
それは紛れもない僕自身だった。


そうして僕は目が覚めた。

そんな、夢を見た。








迷ったり否定したり、自虐したり無下にしたり・・・
それでも生きている限り自分自身からは逃れる事は出来ないなら、それでも諦めきれないものがあるなら、ちゃんと生きなくてはいけないのでしょうね。
まだ本調子じゃないので…不眠症再発したり面倒な自分の体質と向き合わないといけないですけど。
自分自身とは自分が一番付き合っていかなきゃいけないんですよね。
誰かが見てくれる訳じゃない、自分自身で。

これが今のところ私が辿り着ける結果です。

さて、溜まりに溜まったコメントをどうしましょうかね、出来れば一つ一つ、いつもの様にお返し出来れば良いんですが。
難しいですね、返答は、その時でないとわからないものもあるのでしょうから。
今の私が書く事とその時その時に記事を書いた私は少しずつ違う場所に立っているのでしょうしね。
折角頂いたのにちゃんとお返し出来なかったら、ごめんなさい、それでも、ありがとうございました。



きっと、今でも私は大事な人を傷付けているかも知れないけれど。
それでも嫌な部分を全部ひっくるめて、ちゃんと受け入れないといけないんでしょう。

それは自分自身だから。

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